財政能力の要件
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得・更新する要件の一つとして「財政能力」があります。埼玉県の産廃手引きによると、財政能力とは、「事業を的確にかつ継続して行うことのできる経理的基礎を有すること」とされています。簡単にいうと会社経営がうまくいっていることを証明しなければならないということです。この証明をするために、産業廃棄物収集運搬許可を申請する添付資料には、直近3年分の「決算書」の添付が義務付けられています。この「決算書」の経常利益が黒字であれば、財政能力を証明できます。では、この決算書の経常利益に赤字がある場合、どうなるのでしょうか?ここでは、埼玉県の手引きを例をお話しいたします(行政庁によって対応が異なりますので、詳細は各行政庁の手引きでご確認下さい)。
① 直近の決算書において、債務超過である場合
まずは、直近決算期の貸借対照表において、債務超過(負債の総額が資産の総額を上回る状態)であるかどうかを確認します。ここで、債務超過になっている場合、「財務実績計画書」を添付資料として提出する必要があります。直近決算期において、債務超過でなければ、2期前、3期前が債務超過でも、添付資料は必要ありません。
② ①の場合で、直近決算期で経常損失(赤字)が発生している場合・発生していない場合
①の場合で、さらに直近決算書において経常損失が発生していない場合は、①の場合と同じく、「財務実績計画書」を添付することで、申請は受理されます。しかし、①の場合で、さらに直近決算書において経常損失が発生している場合は、さらに3年分決算を通算した経常損益において、損失(赤字)が発生しているかどうかを確認する必要があります。損失が発生していない場合は、「財務実績計画書」を添付すれば、申請は受理されます。「財務実績計画書」は誰が作成しても構いませんが、実現可能でかつ将来的に黒字が実現できる財務実績計画書でなければなりません。
③ ②の場合で、3年分決算を通算した経常損益において、損失(赤字)が発生している場合
②の場合で、3年分決算を通算した経常損益において、損失(赤字)が発生している場合は、「財務実績計画書」とともに、「財務診断書」を提出する必要があります。「財務診断書」は、中小企業診断士又は公認会計士の資格を有した人が作成しなければなりません。診断書の作成は、数週間~1か月以上(作成する中小企業診断士又は公認会計士によります)かかりますので、財務診断書が必要だと判断した場合は、早めに専門家に依頼しましょう。
起業して初めて産業廃棄物収集運搬許可を取得する場合は、経常損失を発生する場合もあります。また、産業廃棄物収集運搬許可更新の際には、早めに経常損失が発生しているか、どのような添付資料が必要なのかを確認して、申請時に添付できるようにしましょう(申請期限に間に合わない場合は、行政に相談して下さい)。